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応亮《アザー・ハーフ》その2

応亮《アザー・ハーフ》その2
  主人公のアップで始まる。前作で、主人公の少年が、父親を連れ戻すために自貢の街に行くのだとカメラのこちら側の母親に訴える場面で始まったように。法律事務所の就職面接に来てカメラのこちら側にいる面接官に答える小芬。この主人公をめぐる物語に並行して、環境に配慮して操業していると言う化学工場の事故と環境汚染が描かれる。主人公を巡る物語にも化学工場の物語にも偽りが潜んでいることが描かれる。

  主人公は男と同棲している。その男はなにをして暮らしているのか示されない。ただ、時に酔って、暴力もふるう、しかし主人公はこの男を信じているようだ。

  主人公が働く法律事務所には、次々と女たちが相談にやってくる。「別れた夫から子供の養育権を取り戻したい女」「台湾の男と早く別れたいと言う女」「軍人の夫に毎日のように殴られ、顔の腫れ上がった女。軍属には離婚の自由はないという」「童養嫁として売られ、70歳になる今も愛情が感じられず別れたいと言う女」「子供ができて学校を追放された18歳は、学校に報復したいという」……13人が次々とカメラに向かって訴える。主人公の母親にも子供に語っていなかった秘密があった。突然、死んだと言われて来た父親が新彊から帰ってくる。事業に成功したので一緒に住みたいと言う。母親もそれを受け入れて、家を捜しに出かけることになる。

  一方で、ラジオなどから市内の化学工場の環境対策の進展とそれを讃える放送が、何度となく画面に流れる。そしてある日、眠っていた主人公は「ボン」という大きな音で目覚める。化学工場で爆発事故があり、有毒なガスが市内に広がり始める。当局は市民に地下壕への避難を呼びかけるが、ついには市内からの脱出を指示する。公安関係者も市街に脱出することに。主人公とその周辺の人たちの暮らしに多くの偽りが潜んでいたのと同じように、化学工場を讃える放送にも偽りが潜んでいた。避難した防空壕で母親は、父親が新彊に戻ったと話す。ダンスホールで働く幼なじみも、アメリカに行くとか台湾に行くことが決まったとか言っダていたが、それは台湾への密航だったことが分かる。福建から乗った密航船の中で窒息し、遺体となって帰ってくる。

  ある日、主人公の男は、殺人事件の嫌疑をかけられ、自貢の街から姿を消す。その容疑が晴れた後も主人公のもとに戻ってはこなかった。彼を捜して主人公は、幼なじみの警官の止めるのも聞かず有毒ガスの蔓延する街に戻って行こうとして橋の上で倒れてしまう。

  画面はここでカラーからモノクロに変わる。前作でも主人公の少年が故郷に戻るところで画面がモノクロに変わった。今回は、主人公の出勤途中にある麻雀店(そこが以前は結婚衣装の店だったことにも何かを映している)が火事になり客たちがバケツで火を消そうとしている場面が逆まわしになる。それにかぶって、いなくなっていた男の電話の声が流れる。「頭を剃るか、白くすれば運が開けると言われた。白く染めて上海に行ったら運が開けた。いま上海で飲食店をして成功している。新しい人生が始まった」

  主人公には、もう「新しい人生」はない。

by KAI-SHI | 2007-11-11 16:39 | 第六世代  

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